
『バイバイ エンジェル』
笠井潔のデビュー作。本格推理小説とありますが、謎解きよりも思想や哲学を前面に押し出している気がする。むしろ、矢吹駆がいう現象学は、そのもの自体は興味深い物だけれど、謎解きの部分においては全く生かされてないというか書かれてないというか、結局なんだったのか。途中のナディアの間違った推理は、読んでいるこっちが恥ずかしい物で、正直ミステリな部分で楽しめる所はそんなに無かった。終盤の、殺人事件を裏で糸を引いていたテロリストとの、革命論と観念論による思想対決のほうが面白い。実際作者は、殺人事件はただ、思想・哲学を伝えるための手段に過ぎなかったんだと思います。
PR